北海道大学電子科学研究所の永井健治教授らと理化学研究所脳科学総合研究センターの研究グループは、細胞内の極微量(nM:ナノモーラ-)レベルのカルシウムイオン(Ca2+)のわずかな濃度変化を超高感度に検出することができる蛍光性Ca2+センサーを開発することに成功した。
下村脩博士らのノーベル化学賞受賞で知られる緑色蛍光タンパク質(GFP)に代表される蛍光タンパク質は、細胞や生体分子を蛍光ラベルする用途としてだけでなく、細胞内の酵素の活性化やイオンの濃度変化などを計測するための分子センサーとして、医学・生物学研究に広く用いられている。
「カメレオン」は、遺伝子工学技術を用いてGFP をもとに開発された蛍光タンパク質であり、細胞内の信号伝達を担うCa2+をリアルタイムに検出するセンサーとして利用されてきた。これまでに「カメレオン」をはじめとして、幾つかのCa2+センサーが蛍光タンパク質の改変や化学合成により開発されてきたが、従来のCa2+センサーは感度が低いため、自発的な生命活動に伴う僅かな Ca2+ の濃度変化を計測することは難しく、これを可能にする高感度センサーの開発が求められていた。
研究グループはカメレオンのCa2+結合領域を新奇の方法で改変することにより、Ca2+に対する結合力を飛躍的に向上させ、超高感度 Ca2+センサー「カメレオン-Nano」の開発に至った。「カメレオン-Nano」の Ca2+との結合力はこれまでに開発されたCa2+センサーの中で最も強く、世界最高の感度(解離定数Kd=15nM)を有している。Ca2+結合領域を微調節することで Ca2+との結合力を変えたセンサーも5種類開発し、センサーのシリーズ化も実現した。
これらの超高感度Ca2+センサーを用いることで、大脳皮質の神経活動を高感度に検出することが可能になっただけでなく、生きた動物個体内における神経ネットワークやこれに制御される筋肉組織の活動パターンの両方を同時計測することに成功するなど、従来の Ca2+センサーでは検出できなかった現象を捉えることが可能になった。
なお、研究成果は,米国科学誌『Nature Methods』の電子版で2010年8月8日(米国東部時間)に公開される。
クラゲから発する蛍光は、驚きよりも美しさに見惚れてしまうレベルのものだが、今回は「カメレオン」。自然が発するセンサーは、人類に何を啓示しているのだろうか。
北海道大学理化学研究所リリース
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