独立行政法人理化学研究所は、韓国のプサン大学と共同で、凹凸の溝が自由に動くはずの細胞をはね返したり、逆にトラップしたりすることを発見した。
研究に当たったグループは、シリコン基板の一部分にさまざまなパターンのμmサイズの凹凸構造を作製し、高移動性で、細胞の移動モデルとして利用されているケラトサイトという細胞を用いて、構造が無い平らな領域からミクロ凹凸構造へと移動した時の挙動を詳細に観察した。
その結果、狭くて(幅1.5μm)、深い(深さ20μm)マイクロ溝(単線溝や格子状溝)の場合には、ほぼ90%以上という高い確率で細胞がはね返されることが初めて明らかになったとのこと。一方、少し幅広(幅4μm)にした格子状のマイクロ溝の場合は、逆に、細胞が溝にトラップされて、平らな領域と比べ、移動効率は100分の1以下に低下することが分かったという。
なお、本研究成果は、オランダの科学雑誌『Biomaterials』オンライン版に近く掲載される予定。
ケラトサイトとは、魚のうろこの上に存在する細胞のこと。うろこの上では、ケラトサイトが何層にも重なって魚の体を覆っており、傷口ができた場合には迅速に移動して傷口を閉じる。移動速度は、1時間で約1,000μmともいわれる。
がん治療において難関といわれるのが「転移」。治療個所を限定できれば、早期発見による初期治療での対策もいっそう効果的なものとなる。薬による副作用の恐れも考えられず、人体に悪影響の少ない手法での実現が期待できるのではないだろうか。
独立行政法人理化学研究所リリース詳細ページ
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