独立行政法人情報通信研究機構(以下、NICT)、株式会社日立国際電気(以下、日立国際電気)、株式会社アイ・エス・ビー(以下、アイ・エス・ビー)は、2013年1月23日、「ホワイトスペース」を利用して、中長距離地域無線の「基地局装置」及び「加入者局装置」の開発とその実証実験に、世界で初めて成功したことを発表している。
今回、同装置には、日立国際電気が開発した「基地局装置」及び「加入者局装置」に、NICTが開発した干渉回避用ソフトウェア、及びIP通信用ソフトウェアなどが実装されており、アイ・エス・ビーが提供する、利用可能な周波数を通信機に知らせる「ホワイトスペースデータベース」に接続することで、「テレビ放送周波数帯(470メガヘルツから710メガヘルツ)」でのIP無線通信を行うことができることが実証されたとのこと。
この技術によって、今後、インターネットなどがじゅうぶん普及していない地域への有線の代替や、補助回線及び災害時・緊急時における無線による通信回線確保を目的とした「ホワイトスペース」活用に関する技術開発が推進されることが期待されている。
ちなみに、米国電気電子学会(IEEE)が、2011年7月に、世界で初めての「ホワイトスペース」利用通信システムの標準化となる、地域無線システム規格「IEEEStd.802.22-2011」を発行しているが、この標準規格に準拠した無線機の開発は、欧米各国の規制及び規格が制定した機能の制限が高く、開発例がまだ発表されていないようだ。
三社は、現在、「IEEE802.22」標準化の主要メンバーであり、引き続き、同技術の国際標準化活動を推進していくことになるが、併せて、「ホワイトスペース」無線通信システムの業界標準規格/相互認証を行う「ホワイトスペースアライアンス」と協調して、商用化に向けた無線機開発にも取り組んでいくそうだ。
テレビなどの利用に割り当てられてはいるが、実際には利用できていない「ホワイトスペース」だが、2012年10月には、総務省が「ホワイトスペース利用システムの運用調整の仕組み 中間とりまとめ」を公表しているように、その具体的な活用方法も形をみせ始めているようだ。そのなかで示されている、割り当ての優先順位では、地デジ、特定ラジオマイクに続く三番手が、今回のようなエリア放送システムとなっている。ワイヤレスが当たり前となりつつある通信環境の未来に何が有効となるか、引き続き注目しておくべき取り組みだろう。
独立行政法人情報通信研究機構リリース
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