独立行政法人理化学研究所は、日本人は生後14ヵ月までに「abna」のような子音の連続が含まれる単語と「abuna」のような子音連続が含まれない単語の音を区別して聞き取れなくなっていることを発見したことを発表した。
そもそも言語には、母音や子音の組み合わせ方や音節についての規則がある。日本語の音節は「ku」や「do」のように子音と母音からなるのが原則で、日本人はそれに合わない外国単語に「u」や「o」の母音を挿入して日本語の規則に合うように修正して発音したり、聞いたりしてしまうといわれている。
「マクド。。」は通じない?
このような、外国語の音を母語の音の体系に合わせて発音したり知覚したりしてしまうことを「修復」といい、例えば、ハンバーガーチェーンの名前で世界に知られている『McDonald(マクドナルド)』は、英語では3音節であるが、日本語では母音を挿入して「ma.ku.do.na.ru.do」と修復して発音するため、英語話者にこれが英語の「McDonald」と絶対に通じない単語として有名といわれている。
研究グループは、生後約8ヵ月と生後約14ヵ月の日本人の乳幼児とフランス人の乳幼児各24人(合計96人)に「abna」、「ebzo」などの連続した子音が含まれる単語と「abuna」、「ebuzo」のように母音を挿入した単語を聞かせ、乳幼児が弁別して聞いているかどうかを調べる実験を行った。
覚える前の文字も修正!
その結果、生後8ヵ月では、どちらの乳幼児も弁別ができていたにもかかわらず、生後14ヵ月になると日本人の乳幼児だけが弁別できなくなっていることを突き止めた。これまで修復は、たくさんの語い(彙)を獲得したり、文字を学んだりした結果起こるものだと考えられていたが、今回の実験から、この修復が、実は語彙も数少なく文字も知らない乳幼児期からすでに始まっていることが分かった。
これは、個別の母音や子音だけでなく、音の並びの規則(音韻体系)についても乳幼児期からすでに獲得が進んでいることを示す重要な発見で、日本人が外国語の音をうまく聞き分けられない原因の解明にもつながる成果とみられる。
なお、同研究成果は、米国の科学雑誌『Developmental Science』に近く掲載されるとのこと。
ちなみに、音節とは、母音を中心とした音のかたまりで、発声の単位のこと。母音の前後に子音が来ることもある。母音で終わる「ba」、「to」などの音節を開音節、子音で終わる「at」のような音節を閉音節と呼ぶが、日本語の音節は例外を除きほとんどが開音節である。また、英語の「strict」という単語は一つの母音の前に「str」という子音連続、母音の後に「ct」という子音連続が来る一音節からなるが、日本語ではこのような子音連続は起こらない。
また、弁別とは、さまざまな特性を持つ刺激の、ある特定の特性によって区別すること。例えば「r」と「l」は英語では異なる子音だが、日本語では区別しない。英語話者が発音した「r」と「l」を録音すると、個々の音声は、話者や話速、そのときの体調、情動などによってさまざまに変化する。その中で、特定の特性、例えば「r」と「l」という「異なる子音であるかどうか」によって音声刺激を区別して認知できることを弁別という。アメリカ人は、「r」と「l」が弁別できるが、日本人は弁別できないというのは、この「異なる子音であるかどうか」という基準で区別して聞くことができるかどうかを指している。
さらに、韻律とは、話すときの抑揚やリズム、強勢のこと。プロソディーともいう。
まさに、語学能力は、DNAに刻み込まれたものなのか。こういったニュースから、幼児教育ビジネスにも変化が現れるかもしれないが、聞き分けられるかどうかにそれほどの重要性があるとは思えない。まずは、現実を理解して。日本人なのだから。
独立行政法人理化学研究所リリース
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